スタッフブログ
信州で暮らす場合、冬場の暖房費って、結構気になるところです。
さらなる、省エネ性と、バランスのよい設計を目指して、
採用するパーツを検討するために、比較検証をしてみました。
標準的な仮想プランを作成して、
太陽の陽ざしが、年間の燃費にどのくらい効果的に作用するかを
検証してみました。
ちなみに、
当社の標準的なスペックを基に計算をしているため、
HEAT20基準を採用しています。
ZEH(ゼロエネルギー住宅)の基準を超えた状態での検証になります。
(ZEH基準以下からの検証になると、光熱費にかなり差が出ると思います)
今回のターゲットは、「窓のガラス」です。
ガラスには、
「日射遮蔽ガラス」と「日射取得ガラス」というものがあります。
簡単にお伝えするならば、
「夏場の陽ざしを遮りたい」 = 「日射遮蔽ガラス」
「冬場の陽ざしを取り込みたい」 = 「日射取得ガラス」 を採用することになります。
ここまでは、省エネ設計ができる建築士であれば、一般的に把握している事です。
夏場の西日を遮りたいなぁ、、
と思えば、「日射遮蔽ガラス」を採用したいところですが、
信州の場合は、「冷房負荷」がそこまで大きくなく、
逆に、冬場の「暖房負荷」が大きい地域。
ですので、できるだけ太陽の日差しは冬場に取り込みたいところ。
では、
「南面のみを日射取得ガラス」とした場合と、
「全方位を日射取得ガラス」にした場合、どの位年間燃費に差が出るかをシミュレーション検討してみました。
↑こちらが、「南方向のガラスのみ」日射取得型にした場合。
赤丸の日射取得量が、「4986kwh/年」を示します。
これを、「全方位の窓ガラス」を日射取得に変更すると、
↓こちら
日射取得量が、「5246kwh/年」に上昇しました。
太陽の陽ざしが、室内に取り込まれて、南面のみのガラスの場合に比べて、
260kwh/年 上昇しています。
一見、暖房費が下がるように思えるのですが、
太陽光発電を含めた燃費計算結果で見てみると、
全方位を日射取得ガラスにした場合の方が、約200円程度上昇してしまいます。
内訳を検証してみると、
冬場の暖房費は、全方位日射取得ガラスの方が暖房費を抑えていますが、
西側の日射取得が影響しており、
夏場の冷房コストが上昇しているようです。
その差はわずかなので、
すなわち、「ガラス」における影響力を考慮するよりも、
建物の「素の性能」を強化することが大切。ということになりそうです。
そのためには、太陽の陽ざし(日射取得)に頼るよりも、
「外壁の断熱性能」、「屋根の断熱性能」、「床の断熱性能」の向上に軸足を置くべきということです。
建物の「素の性能」を大切にするということは、
「換気部材に熱交換機を入れたところでは、断熱性能は向上しない」
「素の性能を最大限生かせるように、建物への日当たりも考慮することが大切」
ということがいえそうです。
ちなみに、
ZEH(ゼロエネルギー住宅)基準を超えているのに
年間燃費は「0円」じゃないの??
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
ZEH(ゼロエネルギー住宅)の計算には、
「周辺に何の遮るものが無い原野に立つ一軒家」を基準に、
「家具家電」「引渡し時に設置していない照明器具」の電気使用量などが含まれておりません。
今回の、
燃費計算ソフトでは、それらの電気使用量を大まかに入力しているため、
ZEH(ゼロエネルギー住宅)の基準計算よりも厳しめの計算結果となっております。
そのため、実質燃費が「0円」という訳ではなく、年間光熱費が発生しております。
また、年間光熱費を下げるだけであれば
換気方式を「第一種熱交換(全熱交換)」などにすれば、光熱費は下がりますが、
それに伴う、マイナスの不具合も生じるため、
第三種換気にて計算をしています。
(第一種換気による、マイナスのポイントは、また別の機会にブログにするとします)
ちょっと長くなってしまいました、、
通して検討してみて、
やはり、バランスが大切。という一言に尽きるかと思います。
それも、
コストを下げるために、採用する商品を限定するのではなく、
「建築主がどうしたいか?」という個別のこだわりや、細部にわたる部資材の調整(オリジナルのカスタマイズ)ができる。
ということが、設計事
務所の良さになるかと思います。
省エネ性が均一化されてきている中で、
住宅がブランドバックや車を購入するような「カスタムしにくい商品」になってしまい、
「暮らしを考える」よりも、「カスタマイズできずに、暮らしを選ぶ」が増えてきているように思います。
「この中から選んでください。」ではない、
「住まい手が納得できる、バランスの良い住まいづくりの方法」が、
私たち、英設計という設計事務所が提案できる最大のメリットかと思います。
建築主のメリットが最大化でき、
より良いものになるように、日々精進いたします。